うるしについて学ぶ

日本の伝統を日常への有限会社ヤマカの山田代表に会ってきました

最近めっきり更新していなかったのですが、さぼっていた訳ではなく色々とやっておりました。
さて今回は以前お会いした奥建具店の奥社長の紹介で有限会社ヤマカさんの代表取締役 山田 嘉一様にお会いして来ました。
事のいきさつなんですが、奥建具店さまの方に依頼をしようと考えていた膠(にかわ)を使った杉集成材のサンプルに関して実験を行ったところ、分かってはいたことなのですが、想像以上に水に弱すぎるということが発覚したという事がありました。(詳しくは後程報告予定です)
それを奥様に相談したところ、その膠の仕入れ先である大阪のヤマカさんの山田社長がたまたま鹿児島に来る予定があるとの事で、お話しの場をセッティングして頂いた次第です。

奥社長(左)と山田社長(右)、奥建具制作所にて

そもそもヤマカさんは漆(うるし)関連事業を中心に行ってきた会社で、日本の伝統文化の継承と発展を企業理念とした会社で天然素材にこだわりを持った会社で、私が考えている理念と合致するなと思いました。漆を扱う中で、同じく天然素材の膠を用いることが多く、そう言う経緯で奥社長の方に膠のサンプルを送ったそうです。
山田社長曰く、膠の接着面をカヴァーするように漆を塗ることによって、漆が水を弾くため浸水を防ぐことが出来るとおっしゃっていました。そもそも漆自体にも接着効果があるらしいので接着剤兼塗料として利用するのも良いのかなと思いました。探したら漆のよる接着に関する研究もありました。実際に集成材を作っていただく奥社長とも相談する必要がありそうですが、兎に角懸案事項だった耐水性の弱さはカヴァーできそうです。

山田社長の漆に対する情熱は大変素晴らしく、色々とありがたいお話をいただいたので、忘備録を兼ねて色々ご紹介します。

朱色と漆黒だけが漆じゃない!

全くの素人である私は漆といえば寺社仏閣で良く使われる鮮やかな朱色は深い漆黒ばかりを想像し、どちらかと言えば洋風の私のデザインとは合わないのかなと考えていたのですが、顔料を混ぜない生漆(きうるし)というのがあって、それを使うと木が美しい飴色になるそうです。この飴色は世界中で生漆だけしか出せない色だそうです。ただ、目が詰まった木以外だと木材が漆を吸い込みすぎてしまうため黒くなってしまうみたいです。でも丁寧にサンドをかけながら塗れば良いらしいのですが、手間が大変かかるとおっしゃってました。

強度が半端ない!

古来より使用されて来た生漆は撥水性と強度がものすごく高いらしく、防水と貝などの付着を防ぐために船底に塗るようなこともあるらしいです。社長のジャケットのボタンは木製のもので、生漆を塗っているとのことで見せてもらったのですが、袖まわりの摩耗しやすい場所にも関わらず、傷一つついていませんでした。

山田社長のボタン、何年も使用しクリーニングも何度もしているらしいのですが、傷一つなかったです

100%天然!
塗料について色々悩んでいたのですが、なかなか100%天然由来というのが見つからない中、生漆は100%天然ということなので本当に安心です。ただ漆ということで勝手に先入観で被れるんじゃないかと思う人がいるそうですが、完全に乾燥した漆でそのようなことはまず起こらないということです(まれに先入観が強い人などで実際には漆のせいではないのに何故か被れてしまう人もいるそうなのですが、社長曰く心理的なものだろうとの事です)。

Toys for SAKURAの製品に関して
更に我々のブランドの目的や開発中の商品についてお話をしたところ、日本の伝統文化であるうるしを使うことが日本の将来を担う子供達にとって非常に有効で、是非使ってほしいとの事を仰って下さいました。確かに洋風なデザインであっても日本独自の素材を用いるというのは先祖の仕事を知る上でも大変素晴らしい事ですし、何より、顔の見える相手と取引することは大変安心が出来ます。実際に試してみないと分からない事が多いのですが、ここはちょっと前向きに検討したいなと考えた次第でした!

接着材 天然接着剤 匠のサンプルが届いた

天然由来の接着材として色々探していたのですが、膠(にかわ)を原料とする接着剤に目をつけました。
http://u-oil.jp/cms/wp-content/uploads/2016/05/natural_adhesive_takumi.pdf
株式会社シオン様の天然接着剤 匠と呼ばれるもので、材料は膠(にかわ)、木酢液、ひば水、米油、木質セルロースと全て天然で安心できそうです。
と言うことで早速サンプルを送ってもらいました。

今日届いたサンプル
このような状態で入っていました。

中身はというと、すごく粘性の高いゼリー状で、木の焦げた匂いがしてます。私は大丈夫なんですが、ちょっと気になる人もいるかもしれないですね。乾燥後に匂いがなければ全く問題ないのでしょうが・・。後、特徴としては、1年以内であれば何度でも湯煎による軟化と乾燥による硬化を行えるということでしょうか。お風呂で使うと剥がれちゃうってことですね。これは気をつけないといけないですね。

匠の中身。かなりの粘性と独特の焦げた匂いがします

使用感に関してはまた後日投稿いたします。

toys for SAKURA 開発編(1)

前回のToys for Sakuraブランディング計画 起業編で書いたように意匠登録の関係上、開発しているものを未だここに掲載することが出来ないのですが、簡単に言うとパズルを作っています。自分の子どもにあげる物であれば素材はなんでも良いのですが、このブランドのルールとしては「出来る限り自然素材」でとしていますので、ベニヤやMDF材ではあまり好ましくありません。そこで無垢素材の木で作ろうと考えたのですが、これが実は案外難しいことのようです。
何が難しいかというと、パズルの厚みが5mm程度の薄さで、大きさが縦横200x300くらいの大きさで考えていたのですが、その薄さだと、木材が反ってしまうためまさ目のものしか使えないだろうということらしいのです。

奥建具製作所を訪問!

薄い木材なら建具屋さんか家具屋さんが多く扱っているんじゃないかという私の浅はかな想像で早速建具屋さんに会いに行ってきました。

門構えの渋い奥建具製作所

今回訪れたのは鹿児島市東開町にある奥建具製作所です。専務取締役の奥光洋さんが対応して下さりました。驚いたことに以前私がスタジオセットをデザインした鹿児島のローカル番組「てげてげ」の製作はここで行われていたみたいなんです。鹿児島は狭いですね。もうすでに一つ仕事を一緒にしていたなんて・・。

てげてげの話は取りあえずおいて、奥さんのお話を色々と聞いたのですが、木材選びの難しさを痛感しました。ここでまとめる内容に関してあくまで奥さんの個人見解ですということを強調してと言われましたので、強調しておきました。

あくまで個人的な見解でを強調する奥さん

安定供給の難しさ

私は無垢の木材を紙とかと同じようにいつでもいくらでも在庫があるものだと思っておりました。でもそれは大きな誤りで、多くの種類の木はたまたま間伐や区画整備で伐採したものが出回るだけなようです。言われてみれば当たり前ですよね。成長の早い杉などを除けば、一本の木がそれなりの大きさに成長するまでには何十年何百年という年月が必要な訳で、そんなに気が長い植林などしても商売にはなりませんからね。ということでなかなか安定供給できる木が多くないというのが現状らしいです。
以下その中でも比較的手に入りやすい(?)木の特徴です。

スギ
かなり手に入りやすいし、まさ目をとるのも簡単そう。ただ見た目的にちょっと高級感に欠けてしまいそう。
ヒノキ
値段がちょっと高いということ、鹿児島では手に入りにくいかも。
クスノキ
鹿児島で手に入りやすいし、良い木なんですが、独特の匂いがするのともしかしたらかぶれる可能性もあるということ。
ヤクスギ
非常に高価、だけど鹿児島産ということにこだわるならありかもしれない。奥さんのところに「ヤクスギっぽい」6mm厚の板が沢山あって使えるかもしれないとのこと(使う場合はヤクスギ専門店に確認してもらう必要がありそう)。ただ、かなり希少なので、安定供給はむずかしそう。あと、目の個性が強すぎるのもデザイン的にちょっと心配なところでした。

サンプルで頂いた「ヤクスギっぽい」やつ。目の個性が強い!
こちらは米ヒバらしいのですが、青森ヒバも似ているらしいです。鹿児島で青森の材料を使うのも案外面白いのかもと思いました。

マツ
現在鹿児島市の鶴丸城というところで御楼門という門の復元をしているらしいのですが、そこでマツの赤い部分だけを使っているので白い部分が出回っているとのこと。ただ、油分が多いのでレーザー加工機では火がでそうで怖い。
イチョウ
まな板なんかを作る用の素材で、きれいだし申し分なさそう。ただやっぱり安定供給は難しそう。
ヒバ
奥さん的にはこれが良いのではみたいな感じでした。良くアメリカ産ヒバを使うらしく見た目もきれいで良さそう。アメリカ産でも安全性が担保できれば良いのですが、国産のものだと青森ヒバが有名らしいのですが、西日本では手に入りにくい感じらしいです。

カエデ
これも良い素材らしいのですが、やはりあまり安定して供給できないとのこと。公園の整備などででることがあるそうです。

現在のところまだ結論に至っていないのですが、とりあえず頂いたサンプルのヒバとヤクスギっぽいので加工してみようかなと思いました。イチョウやカエデに関してはオプションっぽい扱いにしても良いのかな。